投稿日:2025年04月06日/更新日:2025年04月06日

建築業界における環境問題とは|サステナブル建築事例7選も紹介

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昨今、各方面で環境に関する関心が高まっています。

建築業界においても例に漏れず、環境に関して無視できない状況です。

では、建築業界ではどのような環境問題を抱えているのでしょうか。

本記事では、建築業界における環境問題や、今後求められる対応について解説します。

建築が環境に与える影響とは?

ものを建築する過程において、さまざまな環境に対する影響を与えています。

各段階における環境への影響について、詳しく解説します。

資材生産段階

建築において使用する資材として、木や鉄などを準備する必要があります

森林を伐採することで、CO2を吸収する量が低下するため、CO2増加が懸念されるのです。

また、植樹が追い付かないほど急速的に森林を伐採することで、森林破壊が加速する可能性もあるでしょう。

鉄やコンクリートの生産においても、膨大な熱エネルギーが必要となり化石燃料を多く消費します。

化石燃料の消費によって、CO2が大量に発生することで環境への影響が懸念されています。

施工段階

施工段階では、CO2や排気ガス、土壌汚染などの問題があげられます

建築現場に資材を運搬する際にトラックから発生する排気ガスやCO2はもちろん、建築現場で使用する重機からも排気ガスが発生します。

また、施工時に発生した廃棄物の中には、有害物質が含まれているため、土壌汚染も懸念されるでしょう。

さらに、工事を行う際に残土や建築の副産物が発生して、環境への影響を及ぼします。

運用段階

建物を建築した後、空調や照明、給湯、建物に付帯する設備に対して、エネルギーが必要です。

特に大きなビルや商業系の建物では、莫大なエネルギーを消費します

化石燃料を燃焼させる場合や電力を使用する場合においても、それぞれCO2問題は見過ごせません。

また、建物は定期的な改修が必要となり、資材生産段階や施工段階と同じように環境負荷が発生する傾向にあります。

解体段階

建物のライフサイクルマネジメントにおいて、建物の解体もしっかりと考えなければなりません。

建物を解体する際には、重機から発生する排気ガスや有害物質の廃棄などにより環境に影響を及ぼします

焼却可能な建材などは基本的に焼却するものの、廃棄物は埋め立てなどによって対応しなければなりません。

この場合、土壌汚染や海洋汚染が発生するリスクがあります。

環境に配慮したサステナブル建築とは?

サステナブル建築とは、環境負荷を抑えつつ利用する人に快適な空間を目指して設計された建築物のことです

日本建設業連合会では、以下をサステナブル建築と定義付けています。


設計・施工・運用の各段階を通じて、地域レベルでの生態系の収容力を維持しうる範囲内で、(1)建築のライフサイクルを通じての省エネルギー・省資源・リサイクル・有害物質排出抑制を図り、(2)その他地域の気候、伝統、文化および周辺環境と調和しつつ、(3)将来にわたって人間の生活の質を適度に維持あるいは向上させていくことができる建築物を構築することを指します。

引用:一般社団法人 日本建設業連合会


サステナブル建築の目標は、自然環境を保護しつつ長期的かつ経済的に持続可能な社会の実現を目指すことです。

サステナブル建築が注目されている背景には、温室効果ガスの排出による地球温暖化を防止しようとしている点が挙げられます。

2050年までにカーボンニュートラルを達成しようと世界で目指している中で、省エネルギーかつ省資源、リサイクルなど環境負荷の低減につながるサステナブル建築は重要な役割を果たしています。

サステナブル建築を行う3つのメリット

サステナブル建築を採り入れるメリットとして、以下が挙げられます。

  • 地球環境へ貢献できる
  • 省エネによるランニングコストを削減できる
  • 社会的信頼を獲得できる

各メリットについて、詳しく解説します。

地球環境へ貢献できる

サステナブル建築によって、地球温暖化といった人の暮らしに直結する被害に対する対応策となります

ステナブル建築は設計から建設、運用、廃棄までのライフサイクルマネジメントを通して、地球環境への負荷を最大限減らそうとするものです。

以上により、自然と廃棄物や温室効果ガスの削減につながり、地球環境への影響を抑えることができます。

省エネによるランニングコストを削減できる

サステナブル建築により省エネを実現できるため、電気代の減少などランニングコストを削減できるメリットがあります

サステナブル建築では、化石エネルギーの消費が最小となるように設計・運用が要求されます。

また、省CO2と節電、ピークカットの両立を図る必要があり、必然的にランニングコストの削減に繋がります。

さらに、再生可能エネルギーの活用により初期費用が高くなるもののランニングコストを抑えることが可能です。

社会的信頼を獲得できる

サステナブル建築によって、企業として社会的信用を得られるメリットがあります。

サステナブル建築に取り組んでいる姿勢を示すだけでも、ブランドイメージの向上や顧客満足度を高めることが可能です

さらに、規制や認証制度に適合し公的な認証を受ければ、より信頼度を高められます。

資金面でみても、ESG投資を受けやすくなる可能性が高まり新たな事業への資金調達もしやすくなります。

サステナブル建築のデメリット

サステナブル建築には、以下のデメリットがある点を理解しておく必要があります。

  • 建築費用が高くなる
  • 建築に手間がかかる

各デメリットの詳細は、以下のとおりです。

建築費用が高くなる

サステナブル建築の場合、工事全体の費用が高くなる傾向があります

これは、一般的な建築と比較して必要な設備や素材が高額となり、特に設計や施工の段階において多くの手間がかかるためです。

具体的には、断熱性能が高いサッシやガラスの使用や、再生エネルギーとして太陽光発電の導入などによって、高い費用がかかります。

ランニングコストの削減によって回収できる可能性があるものの、初期費用がかかる点はデメリットと言えます。

建築に手間がかかる

サステナブル建築では、従来の建築とは異なる部材を多く使用する関係上、建築自体に手間がかかる場合が多いです。

特に、設計書や図面の作製に時間がかかる傾向があり、部材の入手性も工期に影響を与えるケースがあります

施工時間が長くなればなるほど工期が延びて、最終的に工事費がかさむ点がデメリットです。

環境に優しいサステナブル建築事例7選

サステナブル建築は、すでに身近でも多くのシーンで目にすることができます。

ここでは、環境に優しい建築事例として、以下の建物を紹介します。

  • みなとみらいセンタービル
  • モラージュ菖蒲
  • 箱根ラリック美術館
  • 阪神甲子園球場
  • 六花の森
  • 株式会社きんでん東京本社
  • 京染会館

各建築物の特徴的なポイントは、以下のとおりです。

みなとみらいセンタービル

みなとみらいセンタービルは、神奈川県横浜市のみなとみらいエリアにあるオフィスビルです。

2010年6月に開業し、レノボなどの有名企業が入居する一方で、商業エリアでは飲食店などがあります。

みなとみらいセンタービルは、免震構造と制振構造を併用している点が特徴です。

また、エントランス前に800坪ものリビングガーデンによってヒートアイランドを防止する仕組みも備えています。

さらに、中央部の吹き抜けを最大限活用した太陽光自動追尾システムによって、照明電力の削減を実現

参照:みなとみらいセンタービル MINATOMIRAI CENTER BUILDING

上記の取組みが評価され、横浜市の建築物環境配慮制度であるCASBEE横浜では最高ランクのS評価を獲得しています。

モラージュ菖蒲

モラージュ菖蒲は、埼玉内で最大級のショッピングモール。

モラージュ菖蒲では、夜間にエネルギーを貯めて昼間に使う「氷蓄熱式空調システム」を採用しています。

モールでのLED照明の一部設置や後方通路におけるセンサーによる照明制御などにより省エネを実現

また、建設の段階では、基礎梁の省略化を実現できるダイレクトシーピー構法を採用し、掘削工事において発生する残土搬出を削減し、環境負荷を低減しています。

参照:モラージュ菖蒲

箱根ラリック美術館

箱根ラリック美術館は箱根仙石原のほぼ中心に位置しており、市街地と観光、保養地の中間に位置している美術館です。

仙石原本来の自然を最大限生かしつつ、美術館棟とショップ棟、レストラン棟の3棟がバランス良く配置されています。

外構の照明は樹木や生物に配慮して、シミュレーションのもとで必要最小限の光にとどめ、発熱量も少ないLED照明を採用

建物は景観に配慮して既存の樹木の高さを超えないように配慮しており、市街地との接点となる擁壁には建設時に発生した敷地内の転石を使用しているのが特徴です。

さらに、地域の伝統的な工法である箱根積を採用して、周辺環境との調和を図っています。

参照:箱根ラリック美術館

阪神甲子園球場

阪神甲子園球場は、全国高等学校野球選手権大会の舞台として、そして阪神タイガースの本拠地として有名な球場です。

阪神甲子園球場の特徴として外壁に生えたツタが有名ですが、2006年に一度撤去されて2009年に再植栽されました。

阪神甲子園球場では、環境保全プロジェクトである「KOSHIEN“eco”Challenge」を2021年12月9日に宣言

参照:KOSHIEN“eco”Challenge

建物自体も、銀傘上部に太陽光発電設備を設置して、電力使用量とCO2 排出量の削減を実現しました。

また、グランド散水や球場内のトイレ洗浄水に、井戸水だけでなく雨水を使用するなどの取組みも行っています。

六花の森

六花の森は、旭川から富良野、十勝を結んでいる北海道ガーデン街道の南端に位置している建物です。

雄大な日高山脈を背景として、樹齢100年のニレの木が育ち清らかな小川が流れる豊かな自然環境の中に存在します。

工場の建設とその敷地全体の整備を目指して、壮大なプロジェクトに取り組んでいます。

地形の微細な特徴を洗い出し、クリークの形状や湿地、園路などを配置しているのが特徴です

これにより、水域から陸域までの多様な草木を生育し、地域の原風景を作り出すことに繋がりました。

参照:六花の森

株式会社きんでん東京本社

株式会社きんでん東京本社は、皇居西側の千鳥ヶ淵に程近く緑と水と良好な空気に恵まれている場所にあります。

周辺の環境を活かしつつ、さまざまな環境配慮技術を組み合わせて風と光を感じるオフィ スを実現しています。

気象条件によってサッシの開閉装置の開度を調整できる機構を採用し、自然換気システムの最適化を図っているのが特徴です

また、空調熱源の二次ポンプと空調機の制御バルブを設置することなく、空調機やファンコイルユニットに個別のインバータ制御ポンプを設置して、搬送動力の低減を図る工夫がされています。

さらに、冷却水量の変流量や冷却塔ファンの変風量による省エネルギー方式を採用するなど、随所に省エネと環境負荷低減を図っています。

参照:株式会社きんでん東京本社

京染会館

京染会館は、明治21年より伝統的な工芸美術の妙技を伝承・発展させてきた京染会の拠点となる建物です。

2011年に建て替えが完了し、モダンな中にも歴史を感じさせる建物となりました。

建て替え時は旧京染会館の建築資材を再利用しており、使用する木材などを最小限に抑える工夫がされています

それぞれが色やテクスチュアが異なるボーダータイルを打込んでいる曲面PC板を、千鳥配置した外観が印象的です。

これにより、光と影の演出でよりさまざまな表情をみせて、染と織の雰囲気を強調。

曲面PC板への雨垂れを抑制可能とした水切り形状にも特徴があり、メンテナンスしやすい特徴もあります。

参照:京染会館

まとめ

建築業界においても、環境問題は切っても切れない関係となっています。

環境負荷を低減するためには、サステナブル建築を採り入れるのが有効的です。

特に環境問題への取り組みやSDGs、サステナブルへの配慮は、今後ますます求められます

ただし、サステナブル建築にはメリット以外にデメリットもあるので、本記事で紹介した内容を参考に検討してみましょう。

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