投稿日:2024年05月28日/更新日:2024年09月12日
【2024年度】働き方改革推進支援助成金の4つのコースと申請方法を解説!
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2019年4月より「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が施行されました。
また、新型コロナウイルスをきっかけに多くの企業が従来の働き方を見直しています。
「自社でも働き方改革を進めたいけれど、コストがないために助成金制度を活用したい」と考える人事担当者もいるかもしれません。
本記事では、2024年度の働き方改革推進支援助成金のコースや申請方法、活用事例などをわかりやすく解説します。
自社の働き方改革を進める際の参考にしてください。
働き方改革推進支援助成金とは
働き方改革推進支援助成金とは、中小企業が働き方改革に取り組んだ環境整備に必要な費用の一部を助成する助成金制度です。
働き方改革とは、職場環境の改善や有給休暇取得を促進させるなどの取り組みを指します。
働き方改革推進支援助成金は、生産性を高めながら労働時間の縮減等に取り組む中小企業・小規模事業者や、傘下企業を支援する事業主団体に対して助成するものです。中小企業における労働時間の設定の改善を促進するのが目的です。
働き方改革推進支援助成金を上手く活用すれば、企業は従業員の働きやすさを高め、持続可能な事業運営を実現できます。
中小企業の定義
働き方改革推進支援助成金を受けるためには、中小企業事業主であることが必須です。
「中小企業庁」では、中小企業を以下のように定義づけています。
参照:中小企業・小規模企業者の定義|中小企業庁
上記の定義は、中小企業政策における基本的な政策対象の範囲を定めた「原則」です。法律や制度によって「中小企業」として扱われる範囲が異なる場合があります。
また、「みなし大企業」として大企業と密接な関係を持つ企業が対象から外れるケースもあるので注意が必要です。
ちなみに、みなし大企業とは、以下にあてはまる企業を指します。
- 企業規模は中小企業の定義に該当する
- 親会社である大企業の傘下にある
つまり、中小企業の規模でありながらも大企業の傘下に入り、実質のコントロールは大企業が行っている企業が該当します。なお、法律での定義づけはされていません。
個人事業主が働き方改革推進支援助成金を申請できる要件3つ
働き方改革推進支援助成金は、従業員の労働環境を改善する取り組みを行った中小企業が申請できます。
しかし、以下の3つの要件を満たしていれば、個人事業主でも申請が可能です。
- 労働者災害補償保険の適用事業主である
- 「資本又は出資額」または「常時使用する労働者」を満たす
- 年5日の年次有給休暇を取得させるために就業規則等を整備している
それぞれ解説します。
労働者災害補償保険の適用事業主である
まず、労働者災害補償(労災)保険の適用を受けていなければなりません
労災保険とは、労働者の業務災害や複数業務が原因で起こりうる災害、通勤災害に対して迅速かつ公正な保護をするために保険給付を行う制度です。
また、被災労働者の社会復帰の促進や被災労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保などを図り、労働者の福祉の増進に寄与することを目的とします。
参照:労働者災害補償保険制度、 労働保険適用徴収制度等の概要|厚生労働省
「資本又は出資額」または「常時使用する労働者」を満たす
中小企業基本法でいう「常時使用する従業員」とは、労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」です。
「資本または出資額」と「常時雇用する労働者」条件は、以下の表の通りです。
業種 | 資本または出資額 | 常時雇用する労働者 |
小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
参照:中小企業の範囲|厚生労働省熊本労働局
なお、資本金などがない場合には、労働者数のみで判断します。
年5日の年次有給休暇を取得させるために就業規則等を整備している
1年に10日以上の年次有給休暇が付与される従業員には、1年間で5日分を取得してもらう必要があります。
そして、企業としてそのための就業規則などを整備していなければなりません。
なお、ここでいう「1年に10日以上の年次有給休暇が付与される従業員」には、管理監督者や有期雇用労働者も含みます。
働き方改革推進支援助成金の4つのコース
働き方改革推進支援助成金には、以下の4つのコースがあります。
令和6(2024)年度から、労務・労働時間の適正管理を推進する「労働時間適正管理推進コース」がなくなりました。
1.業種別課題対応コース
2024年4月1日より、建設業、運送業、病院等、砂糖製造業に、時間外労働の上限規制が適用されました。
業種別課題対応コースでは、成果目標の達成を目指し、下記の1〜9の取り組み(「団体推進コース」以外は全コース同じ内容)のいずれか1つ以上を実施し、達成状況に応じ助成金が支給されるしくみです。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
成果目標の達成状況に応じて、低い方の金額が支給されます。
参照:働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)|厚生労働省
2.労働時間短縮・年休促進支援コース
2020年4月1日より、中小企業に時間外労働の上限規制が適用されました。
労働時間短縮・年休促進支援コースでは、生産性を向上させ、時間外労働の削減や年次有給休暇、特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組んでいる中小企業事業主を支援します。
参照:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省
3.勤務間インターバル導入コース
「勤務間インターバル」とは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設け、働く人の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るものです。
2019年4月より、制度の導入が努力義務化されました。
勤務間インターバル導入コースでは、勤務間インターバル制度の導入に取り組む中小企業事業主を支援します。
参照:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)|厚生労働省
4.団体推進コース
団体推進コースとは、中小企業事業主の団体・連合団体が対象となる助成金です。
傘下の事業主が時間外労働の削減や賃金引き上げに向けた取り組みを実施した場合、その事業主団体などに費用の一部が助成されます。
対象となる取り組みは以下の10項目です。
- 市場調査の事業
- 新ビジネスモデル開発、実験の事業
- 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)の事業
- 下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整の事業
- 販路の拡大等の実現を図るための展示会開催及び出展の事業
- 好事例の収集、普及啓発の事業
- セミナーの開催等の事業
- 巡回指導、相談窓口設置等の事業
- 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
- 人材確保に向けた取組の事業
いづれか1つ以上を実施することが必要。
支給額は、対象経費の合計額か総事業費から収入額を控除した額、上限額500万円までが対象です。
参照:働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)|厚生労働省
働き方改革推進支援助成金の申請方法
この章では、働き方改革推進支援助成金の申請方法を4つのステップに分けて説明します。
- 交付申請書を提出する
- 事業実施
- 助成金支給申請書の提出
- 助成金受給
働き方改革推進支援助成金は、予算額の上限に達し次第、予告なく受付が修了する場合があるため、早めに申請の準備を行いましょう。
交付申請書を提出する
まずは、交付申請書を最寄りの労働局雇用環境・均等(部)室に提出します。直接持参しても郵送でもかまいません。
申請のために、以下の書類をそろえておきましょう。
- 交付申請書や事業実施計画
- 36協定届
- 就業規則(写し)
- 年次有給休暇管理簿の写し
- 賃金台帳の写し
- 見積書
交付申請書のひな形やマニュアルは厚生労働省HPよりダウンロードが可能です。
事業実施
事務局にて提出書類を確認し、交付・不交付の審査が行われます。
交付が決定したら、決定通知が届きます。このあと、計画した事業を実施しましょう。
助成金支給申請書の提出
事業を実施し、事業実施予定期間が終了した日から起算して30日後までに助成金支給申請書を管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。
事務局で事前に期日が設定される場合もあるので注意が必要です。
その際、以下の書類を一緒に提出します。
- 支給申請書
- 事業実施報告書に添付資料
交付申請時と同じく、支給申請書のひな形やマニュアルは厚生労働省HPよりダウンロード可能です。
助成金受給
助成金支給申請書を提出後、支給申請書や実施した事業報告書をもとに事務局で審査を行います。
問題がなければ助成金が受給できます。
2024年度働き方改革推進支援助成金の申請期限
2024年の交付申請は4月から開始しており、受付終了は11月29日までです。
なお、先述した通り、予算額の上限に達した場合、予告なく受付が締め切られるかもしれません。申請する場合は早めに準備をしましょう。
働き方改革推進支援助成金を申請する際の注意点
働き方改革推進支援助成金を申請する際には、以下の4つに注意しましょう。
- 助成金支給条件を満たしているか
- 締め切りに余裕をもって提出する
- 助成金が支給されるまでにタイムラグがある
- 中長期的な見通しを立てる
それぞれ詳しく解説します。
助成金支給条件を満たしているか
働き方改革推進支援助成金を受給するには、対象事業者に求められる条件を満たしているかチェックしましょう。
どの目標を達成するか、その目標が達成できるかをしっかりと確認して施策を進めなければなりません。
締め切りに余裕をもって提出する
申請数が多いと予算の上限に達し、予告なく切り上げられるケースもあります。
そのため、締め切り日の2〜3か月前を目途に申請すると安心です。
ちなみに、2022年度は、労働時間短縮・年休促進支援コースが予定より早く締め切られています。
社会保険労務士などによるコンサルティングを受けて計画を立てるのもおすすめです。
助成金が支給されるまでにタイムラグがある
働き方改革推進支援助成金の支給までにはタイムラグがあります。
助成金が受給できるのは、取り組みを実施し成果を達成して、その報告が認められてからです。
そのため、取り組みにかかる費用は事業者が先に負担しなければなりません。したがって、事前に資金調達をする必要があります。
中長期的な見通しを立てる
最寄りの労働局への支給申請書の提出は、事業や取り組み実施の予定期間が終了した日から起算して30日後です。
また、事務局で事前に期日が設定されるケースもあります。
そのため、事業実施の期間は長めに取っておくと安心です。
働き方改革推進支援助成金の活用事例
最後に、働き方改革推進支援助成金を活用した企業を3社紹介します。
- 株式会社寺田鉄工建設
- 大生食品工業株式会社
- 株式会社陣笠
自社で申請する際の参考にしてください。
株式会社寺田鉄工建設
株式会社寺田鉄工建設では、労働時間をタイムカードを使用しExcelに手入力して算出していました。
そのため、打刻の印字が不鮮明だったり、打刻漏れが発生したりして、労働時間を適切に把握できませんでした。
そこで、正確な勤怠管理や業務を効率化するために、働き方改革推進支援助成金を活用したのです。
その結果、個人別に該当週の隔週日別で労働時間を表示できるようになり、週、月、年の通算労働時間、残業時間が可視化されました。
また、顔認証システムを導入し、本人以外は打刻ができなくなり、日本語が苦手な外国人労働者にはアイコン表示で識別をしやすくしました。
働き方改革推進支援助成金受給後は、社員が労働時間の推移やワークライフバランスの比率の目視が可能になり、時間外労働時間の削減の意識が芽生えています。
そして、労務管理ソフトを導入し、集計ミスが無くなくなり適正な労務管理が可能になった点も成功点です。
大生食品工業株式会社
大生食品工業株式会社では、新たな人材の確保が難しいなかで、従業員の労務負担を軽減しながら、作業を効率化させていました。
そこで、働き方改革推進支援助成金を活用し、新たな調理用機器として湯せん機と電気フライヤーを導入したのです。
導入後は、作業時間の短縮に加え、調理が順調に行われた際に発生する空き時間は別の業務ができるため、労働生産性向上につながっています。
また、労働時間はICカードを導入し適正に把握できるようになりました。
さらに、労働者の健康と福祉のために「勤務間インターバル制度」を導入しています。
株式会社陣笠
株式会社陣笠では、昨今の人手不足のなか、レジ要員の配置や団体客向けのお茶の給仕など、ホールスタッフの手を取られがちでした。
そこで、ホールスタッフの業務改善と労働能率の向上のため、働き方改革推進支援助成金を活用し、POSシステム、セルフレジ、給茶機の設備を導入しました。
その結果、レジ業務や給茶に人手が不要になり、ほかの業務ができるようになり、労働生産性が向上しています。
そして、6名の労働者の時間給を各50円(最大増加率5.8%)引き上げました。
また、次年度にはタッチパネル端末による注文やコールシステム、大型冷凍庫の導入をきっかけに、2年連続で5名の労働者の賃上げに成功しています。
まとめ
本記事では、働き方改革推進支援助成金のコースや申請方法、活用事例などをわかりやすく解説しました。
働き方改革推進支援助成金とは、中小企業が働き方改革に取り組んだ際に費用の一部を助成する助成金制度です。
取り組み課題に応じて4つのコースが設けられています。
申請にあたっては、予算の上限に達した場合、締め切り前でも予告なく受付が終了するかもしれません。準備は余裕をもって行いましょう。
また、受給までにはタイムラグがあるため、取り組みにかかる費用は先に負担する必要があります。
そして、中長期的な見通しを立てて社会保険労務士やコンサルティング会社などを活用しながら目標達成を目指すと安心です。
働き方改革推進支援助成金の申請や活用に悩んだら、実際の活用事例も参考にしてください。
中小企業の成長には、従業員の一人ひとりの生産性向上が必要不可欠です。
働き方改革推進支援助成金を活用し、従業員にとっても企業にとっても意味のある改革を行いましょう。