投稿日:2025年02月22日/更新日:2025年02月22日
施工不良はなぜ起こる?企業ができる対策と原因、法的責任の基礎知識
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建築物の施工不良は、工事が設計図通りに行われていない状態を指し、建築基準法違反や契約不履行など深刻な問題を起こします。
また、工事のやり直しが発生したり損害賠償を請求されたりと、多くのコストが発生し会社の信用も失うでしょう。
近年、建築物の品質や安全性への関心が高まるなか、施工不良は建設業界における重要な課題です。
この記事では、施工不良が起きる原因や防止対策、法的責任などを解説します。
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施工不良とは
施工不良とは、建築物が意匠図や構造図などの設計図通りに施工されていない状態のことです。
業界や法律では、施工不良は欠陥住宅などの問題として認識され、建築士法や民法に基づく責任を負う場合があります。
法令に違反している
建築物を建てるときは、建築基準法にしたがって作業を進め、安全性の高い建物を建築しなければいけません。
建築基準法は建物の利用者の安全を守るための法令であるため、違反している場合は施工不良となり、処罰の対象となります。
- 耐震強度が十分ではない
- 耐火性に問題がある
- 階段の幅が足りていない
- 建ぺい率や容積率がオーバーしている
なお、法律で定める基準を満たせていない建物は「違法建築」と呼ばれます。
施工水準を満たしていない
建築関連の知識や仕事の経験がない人が見てもひどいと感じる建物は、施工不良です。
たとえば、以下のような状態があるでしょう。
- 外壁の塗装が明らかにひどい状態
- 柱や壁などが一目見ただけで変形しているのがわかる状態
- 建物の利用者の健康が悪化する危険性が高い状態
- 安全性が守れない状態
なお、契約で定められた通りに作られていない建物は、たとえ品質が高くても施工不良となります。
契約書を交わしてお金のやり取りが発生している以上は、依頼者の注文通りに建築するのは最低条件です。
また、施工不良は施工者が賠償責任を負う必要が生じます。
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施工不良が起こる3つのの原因
施工不良が起こる原因には、以下の3つがあります。
- 工期が短い
- 知識不足・人手不足
- 粗悪な材料の使用や手抜き
それぞれ詳しく解説します。
工期が短い
工期が短いと作業員に対して時間的なプレッシャーがかかり、十分な確認作業ができません。
いくら自動化やAIロボットが普及しているとはいえ、建設現場は職人や担当者が手作業で作業を進めています。
無理な短工期で進めては、必ずミスが生じるでしょう。
また、納期が厳しいと感じたら、工期の延長も検討すべきです。
知識不足・人手不足
職人の知識不足、作業員や担当者の不足も施工不良の原因の1つです。
施工基準や手順を正しく理解していなかったり、知識が不足したりしているとミスにつながりかねません。
また、常態化している人手不足は大きな要因になっています。
若手作業員に対して適切な教育やトレーニングを実施し、正確な施工基準と手順を周知することが大切です。
粗悪な材料の使用や手抜き
コストカットをし過ぎても施工不良につながります。
たとえば、壁の目地のシーリング材や塗料などに耐候性がない材料を使用してしまい、竣工後に激しい劣化が見つかり、設計された材料ではなかったと確認されるケースなどがありました。
コストカットは企業運営には重要な考え方ですが、あまりにもコストカットしすぎると取り返しのつかない問題に発展してしまうかもしれません。
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施工不良を起こさないための3つの対策法
施工不良は事前の対策で防止できます。
- 最適な工期の設定
- チェック表の活用
- 隠蔽部などの撮影
施工不良が発生してから対策をするのではなく、発生させない対策を行いましょう。
最適な工期の設定
工事の見積および積算の精度を向上して現実的な工期と工事原価を設定しましょう。
また、プロジェクト全体の概要を把握し、詳細なスケジュールを立てなければいけません。
最適な工期を設定するためのポイントは以下の通りです。
- 作業の洗い出し
- 各工程の所要日数の算出
- 休日や休工日を考慮して実質日数を考える
工事の進行状況を常に確認し、スケジュールの圧迫を未然に防ぎましょう。
チェック表の活用
施工不良が起こりやすい部分を洗い出し、独自のチェック表を作成するのも有効です。
チェック表は、使用する材料の品質や作業手順、作業員のスキルなどを網羅したものを作成しましょう。
施工した場所や施工前の状況を責任者にチェックしてもらうなど、複数の目での確認を徹底するのもポイントです。
さらに、最新の技術を活用したデジタルツールやアプリを導入して、リアルタイムでの進捗管理や品質チェックを実施するのも効果的でしょう。
隠蔽部などの撮影
施工状況を写真に残して第三者に確認してもらいましょう。
施工後に隠れてしまう部分は、必ず施工前に撮影してください。
目に見えない部分には配線や配管などがあるため、重要な記録となります。
近年では、見えにくい部分にドローン撮影を使ったり、電子小黒板付きのアプリなどもあるので、うまく活用しましょう。
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施工不良が起こった際の罰則は?
施工不良が起こった場合に業者側に発生する罰則は、以下の2つです。
- 契約不適合責任
- 不法行為責任
万が一、施工不良が発生した場合にそなえて、適切な対処法を知っておきましょう。
契約不適合責任
契約不適合責任は、契約内容と異なる建築物が納品された場合に発生する責任で、債務不履行責任とも呼ばれます。
たとえば、無垢材指定のリビングに合板材が使用されていた、収納棚を2つ取り付けるところに3つ付いていたなどです。
特に、新築の注文住宅では、欠陥や契約との相違が見つかり問題となるケースが多いのが特徴でしょう。
責任が生じる期間は以下のとおりです。
- 責任期間は原則として「不適合を知った時から1年」
- 構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分については「引き渡しから10年」
新築の注文住宅に関しては、引き渡しから10年間も責任期間が強制的に適用されるので注意しましょう。
不法行為責任
故意に施工不良を発生させたり、過失によって施工不良を発生させたりした場合も、不法行為責任を追及できます。
ただし、追及方法は損害賠償のみで、契約不適合責任よりも追及できる方法が限られます。
不法行為責任を追及するためには、時効にも注意が必要です。
時効は依頼者が施工不良だと知った日から3年で、生命の危険が及ぶ施工不良の場合は5年と定められています。
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施工不良を起こさない!品質向上のための取り組みポイント
本章では、実際に施工不良を起こさないめの取り組みポイントを、業界と個人に分けて紹介します。
業界や企業としての取り組み
業界でできる取り組みは以下の3つです。
- 研修や認定制度を設ける
- 第三者機関にチェックしてもらう
- 社内で振り返りを行う
人材の技術向上はもちろん、認定制度をうまく活用することで人材流出を防げる点もメリットです。
また、品質保証のために第三者チェックの活用や頻度を増やす取り組みも有効でしょう。
個人ができる施工不良対策
個人ができる取り組みは以下の2つです。
- チェックシートを必ず確認する
- 図面との差異に気づいたら相談する
工程ごとにチェックシートで必ず振り返りを行い、再々点検を行いましょう。
慣れてくると「大丈夫」といった自信が付きますが、一人前になったときこそ注意です。
必ずチェックシートを確認し、工程ごとに点検作業を行いましょう。
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まとめ
施工不良は、法令違反や施工水準の未達、契約不適合など、さまざまな形で発生する可能性があります。
施工不良を防ぐためには、最適な工期設定やチェック表の活用、隠蔽部の写真記録など、体系的な品質管理体制の構築が不可欠です。
万が一施工不良が発生した場合は、契約不適合責任や不法行為責任などの法的責任が問われる可能性があるでしょう。
建築物の品質確保は、利用者の安全と企業の信頼性を守るために重要であり、予防的な取り組みを徹底することが大切です。