投稿日:2025年05月12日/更新日:2025年05月14日
【建築基準法はクリアできる?】3Dプリンター建築とは?メリットや実例も紹介
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新しい施工方法として「3Dプリンター建築」が広まりつつあります。
しかし、どのようなメリットがあるのか?建築基準に合致しているのか?など疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、3Dプリンター建築についてメリットやデメリット、建築基準をクリアする2つの方法などを、わかりやすく解説します。
また、3Dプリンターの実例も5つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

3Dプリンター建築とは
3Dプリンター建築とは、3Dプリンターで作製した建材を使用して作られた建築物のことです。
3Dプリンターの研究は1970年代から始められており、2013年に初めての建設物が発表されました。
その後、ドイツで初の3Dプリンター住宅ができたり、アメリカでは100戸で構成される住宅団地の建設も進行しています。
また、竹中工務店は大阪万博へ3Dプリント建築を出展し、大きな話題を呼びました。

3Dプリンターと建築基準法
日本の建築基準法においては、住宅の安全性や強度を確保するために建材や工法に厳しい基準を設けています。
特に、日本は地震大国であり他の国と比較しても基準が厳しめな傾向があります。
また、現行の建築基準法では木造や鉄筋コンクリート造、鉄骨造といった、従来通りの技術での構法しか想定していません。
よって、3Dプリンター技術に完全に適応しておらず、建築基準法をクリアできていないのが実情です。
3Dプリンターの住宅で使用される一般的なモルタルは、建築基準法第37条の「指定建築材料」に該当しません。
これにより、法的な強度基準を満たすものと認められない状況です。
3Dプリンターで建てられた家は、構造耐力の基準に適合させることができれば3Dプリンターの家も実現できると見られています。
ただし、耐震性だけでなく耐風性や耐火性などの構造耐力についても適合させる必要があります。

3Dプリンターで建築基準法をクリアした家を建てるための2つの条件
3Dプリンターで建築基準法をクリアした家を建てるためには、以下の条件をクリアする必要があります。
- 強度や耐久性を十分に確保しなければならない
- 国土交通大臣からの大臣認定を受けなければならない
各条件について、詳しく解説します。
強度や耐久性を十分に確保しなければならない
3Dプリンターで家の構築物を作る際に使用するモルタルの建築基準法を満たすために、強度や耐久性を十分に確保する必要があります。
特殊モルタルとして知られているデンカプリンタルやセメント系素材のスリムクリートを混合した素材を用いれば、建築基準法を満たすことが可能です。
どうしても3Dプリンターで家を作りたい場合、構造耐力上で主要な部分に該当しない箇所で使用する方法も選択肢として存在します。
国土交通大臣からの大臣認定を受けなければならない
素材自体が建築基準法の基準を満たしても、建築基準法第20条に基づいた国土交通大臣からの大臣認定を受けなければなりません。
認定を受けるためには、3Dプリンターの家で使用する材料の安全性を、品質や強度面から厳しく審査されます。
3Dプリンターで作成したモルタルを建築物に使用したい場合、建築基準法上の扱いとしては構造を支える部分に使用するか否かによって異なります。
壁や型枠などの非構造部材として使用する場合、特別な手続きは不要です。
一方、構造耐力が必要な箇所に使用する場合、法的な強度基準を満たす必要があり、国土交通大臣の認定を得る必要があるのです。

3Dプリンターで家を建てるメリット
3Dプリンターで家を建てるメリットとして、以下3点が挙げられます。
- 建築費用を抑制できる
- 短納期で建築できる
- デザイン性が高い家を建築できる
各メリットの詳細は、以下のとおりです。
建築費用を抑制できる
通常の建材は、運搬する必要があり運搬費や人件費がどうしてもかかりがちです。
一方、3Dプリンターで家を建てる場合は3Dプリンターを現場に持ち込みその場でパーツを作製可能であり、重量のある資材を運ぶ必要はありません。
これにより、人件費や運搬費を大幅に削減できるメリットがあります。
また、3Dプリンター住宅の主な材料はモルタルやバイオセメントやコンクリートとなり、木材と比較して安価に抑制できる点も魅力的です。
短納期で建築できる
3Dプリンターの場合、24時間稼働させて建材を作製できるメリットがあります。
従来の住宅で用いられている木材は、人が機械を使用して加工する必要があり、一日に作業できる時間には限界があるものです。
よって、3Dプリンターを用いれば必要な建材を短納期で入手できるようになり、家を建てるための工期も短縮できます。
デザイン性が高い家を建築できる
一般的な建築工法の場合、曲線を活用した住宅はほとんど見られません。
一方、3Dプリンターで作製した建材は曲線を活かしたデザインも可能となり、デザイン性の高い家を建築できるメリットがあります。
また、3Dプリンターの場合は設計図通りに精巧に仕上げられるメリットもあります。
家を建てられる面積に制約がある場合や、スタイリッシュな家を建てたいという人に3Dプリンター住宅は最適です。

3Dプリンターで家を建てるデメリット
3Dプリンターで家を建てるデメリットとして、以下が懸念されます。
- 耐久性や耐震性に不安がある
- 住宅設備の設置コストがかかる
- 基礎工事に対応できない
それぞれ見ていきましょう。
耐久性や耐震性に不安がある
3Dプリンターで建てた家の耐用年数は、木造住宅より短いというデメリットがあります。
これは、現時点で建築基準法で定められている耐震性や耐火性を十分に満たす3Dプリンターで建てた家が現状では少ないためです。
耐震性については従来のコンクリート造りの住宅の場合、強度を高めるために壁の内部に鉄筋を入れています。
一方、3Dプリンターの場合はコンクリートで形を積み上げることはできるが、鉄筋を入れることは現状困難です。
以上から、現時点では一般の住宅を建築するのに向いてはいないといえます。
住宅設備の設置コストがかかる
電気やガス、給水などの住宅設備に、3Dプリンターで建てた家が対応していないデメリットがあります。
電気やガスなどの設備を設置する際には、壁に穴を開けたり配管や配線を行ったりしなければなりません。
すべて職人の手に頼る必要があり、時間と手間がかかってしまいます。
今後、対応した3Dプリンターの建材が増えれば、上記の課題は解消される可能性があります。
基礎工事に対応できない
建設用の3Dプリンターでは、現状では基礎工事に対応できていません。
これは、建設用の3Dプリンターの場合はモルタルを吐出して壁を造形していく方式であるためです。
基礎工事を行う際には、鉄筋を内部に入れつつ基礎の強度を上げる必要があります。
3Dプリンターの場合、鉄筋を入れながら基礎を作ることは困難です。

有名な3Dプリンターの住宅5選
徐々に普及している3Dプリンターの住宅の中で、特に以下5つが注目されています。
- 52戸の住宅を3Dプリントで建築(ケニア)
- 2週間で完成したコンクリート製3Dプリント住居(中国)
- 世界最大級の3Dプリント建築物(サウジアラビア)
- Lib Work(熊本県)
- 3dpod(大林組)
それぞれの特徴について、詳しくみていきましょう。
52戸の住宅を3Dプリントで建築(ケニア)
スイスのセメント大手Holcim社が、アフリカ最大の3Dプリント住宅プロジェクトと位置づけて集合住宅を建築しました。
アフリカでは、手頃な価格で購入できる住宅が不足している問題がありました。
これを解消しつつ、地元で熟練した雇用を創出するために3Dプリント住宅が導入されたのです。
ケニアの環境に合わせた住宅は、施工主としては化石燃料の消費量を50%以上も削減できると主張しています。
また、従来の工法では4日間かかっていた壁を、僅か12時間で建設できるようになりました。
参照:アフリカ最大の低価格3Dプリント住宅建設プロジェクト|3DP id.arts
2週間で完成したコンクリート製3Dプリント住居(中国)
中国北部の河北省にある農村部において、巨大な建設用3Dプリンターを使った3Dプリント住宅を建設した実績があります。
2022年冬季オリンピックの共同開催地であった張家口市五家庄村に建築され、吹き抜けの天井や織り模様で装飾されている3Dプリント製コンクリート外壁が特徴の住宅となっています。
延床面積は106平方メートルで、ロボットアーム式の大型3Dプリンターを使用し、コンクリート材を使用して壁面がプリントされているのが特徴です。
なんと、施行から2週間で完成したことで大きな話題を呼びました。
参照:【最新事例】世界で建設される3Dプリンター住宅、日本への実用化は?|ShareLab
世界最大級の3Dプリント建築物(サウジアラビア)
サウジアラビアでは、全高9.9メートルと世界最大級の3Dプリント建築物が建築されました。
3階建ての建物は、サウジアラビアの建物らしく高価な設備が多く使用されており、浴室付きのメイドルームなども設置されています。
使用したコンクリート材料については、99%が地元の材料を使用しているのが特徴です。
また、本建造物を建てたサウジアラビアの不動産開発会社であるDar Al Arkanは、アメリカのフロリダでハリケーンなどにも耐えられる3Dプリンター建造物を作った実績があり、強度の高さも十分確保されています。
参照:サウジアラビアに世界初の3Dプリント・モスクが誕生|セカプリ
Lib Work(熊本県)
熊本県の住宅メーカーであるLib Workでは、2024年1月に国内では初となる3Dプリンター住宅を作製しました。
Lib Earth House “modelA”は建築基準法をクリアするなど、実用できる住居として注目されています。
建物の構造箇所に集成材を用いたラーメン造を使用することで、建築基準をクリアしているのが特徴です。
自然との調和を重視しており、ナチュラルなイメージの強い建築物となっています。
参照:土を主原料とした「3Dプリンターの家」『Lib Earth House “modelA”』完成|Lib Work
3dpod(大林組)
3dpodは大林組が開発した実験棟で、国内で初めて建築基準法に基づく国土交通大臣認定を取得したことで有名です。
電気や空調、水道などの設備や断熱性能についても、従来の建築物と同等の基準をクリアしている特徴があります。
壁や床など、全ての地上構造物に3Dプリンターを用いて制作されており、水道などのインフラ設備も基準をクリアしています。
9年の研究結果から生まれたものであり、今後の新しい建築手法として注目されているのです。
参照:3Dプリンター実証棟「3dpod™」が完成|大林組

まとめ
3Dプリンターの建築物は、日本ではまだまだ導入までのハードルが高い状況です。
ただし、研究が続いている中で実際に実用レベルまで行き着いた建築物も登場しています。
また、建築基準法が改正されることにより、爆発的に普及することも見込まれているので今後も注目しましょう。