投稿日:2024年04月08日/更新日:2024年09月12日

健康経営とは|5つのメリットや例を徹底解説!建設業との親和性も

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「健康経営」とよく聞くものの、どのような経営法なのか、メリットや具体例を知りたいと思っていませんか?

本記事では、健康経営について注目される背景やメリット、製造・建築業との関連性や有効性をわかりやすく解説します。

ぜひ健康経営を導入し、他社との差別化を図り、人材確保や利益率の向上を目指しましょう。

健康経営とは?

健康経営とは、企業が従業員の健康管理を経営課題としてとらえて積極的に改善に取り組む施策のことです。

施策を実施することで、生産性の向上や組織の活性化が期待できます。

従業員の健康は、仕事のクオリティやモチベーションに大きく影響するものだと明らかになったことで、いま注目されている経営方法です。

健康経営が注目される背景や理由

近年、行政機関が積極的に推進するようになり、今では多くの企業が取り組んでいます。

健康経営がここまで注目されるようになった背景を3つ紹介します。

少子高齢化による人手不足の悩み

現在、日本は少子化によって生産年齢人口(15歳~64歳の人口)が急減しています。

そのため、少子高齢化による人手不足に悩む企業が増えている状況です。

そこで健康経営を実施することで、人材を効率的に確保できるため、導入が進んでいます。

退職年齢の引き上げにともなうリスク

2つめは、退職年齢の引き上げリスクに対応するためです。

2025年4月より、中小企業も含めたすべての企業において定年退職を60歳から65歳にすることが義務付けられています。

参照:高年齢者雇用安定法 改正の概要|厚生労働省

これにより、職場の平均年齢が高くなっています。

また、土木建設・運輸などの業種ではすでに従業員の高齢化が進行している状況です。

高齢な社員ほど健康リスクが高いため、高年齢層でも健康で快適に働ける職場環境のメンテナンスが必要不可欠になってきています。

心身の健康状態が大きく業績に影響する

3つめは、心身の健康状態が大きく業績に影響すると立証されたたために注目を浴びています。

「健康経営」の概念を推奨したのは、アメリカの臨床心理学者のロバート・ローゼン氏。

ローゼン氏は、数多くのアメリカ企業の事例を分析・調査して、心身ともに健康な従業員が多い会社ほど組織全体のクオリティが上がることを明らかにしました。

現在ではローゼンの研究以外にも、プレゼンティーズム(何らかの疾病や不調を抱えながら従業員が出勤し、生産性が低下している状態)の発生が企業に与える損害など、さまざまな面から従業員の健康と企業の業績の関係性が、科学的・統計学的に立証されつつあります。

健康経営の5つのメリット

本章では、健康経営のメリットを初心者向けにわかりやすく紹介します。

メリットは以下の5つです。

  • 労働生産性の向上
  • 離職率の低下と人材の定着
  • 求職者へアピールし、採用活動を強化できる
  • 健康経営の各種認定制度によるインセンティブの獲得
  • CSRやSDGsのアピールにつながる

それぞれ解説します。

労働生産性の向上

健康経営を推進することで、従業員の作業クオリティを最大限引き出せるようになり、全社的に労働生産性が向上します。

従業員の健康状態が悪い職場だと、会社全体の労働生産性は著しく低下する恐れがあります。

心身の不調によって従業員の欠勤・休職が発生すると、他の従業員がさらに業務を補うことになり、業務の負担が大きくプレッシャーを感じる人も出てくるでしょう。

それにより、他の従業員も健康状態を崩したり、離職したりするケースが増え、さらに労働環境が悪化して手が回らなくなるといった、負のスパイラルが起きてしまう可能性もあります。

最悪の場合は、人手不足で倒産してしまうケースもありうるため、早い段階で対策に取り組むことが大切です。

離職率の低下と人材の定着

慢性的に健康やメンタルに不調を抱えている従業員が多い職場では、必然的に離職率も高くなります。

従業員が早期退職をすると、さまざまなコスト・損失が発生してしまいますが、健康経営とワーク・ライフ・バランスを推進し、仕事とプライベートを両立できる職場にすることで離職率を低減できます。

従業員の退職にともなう莫大なコスト・損失も最小限に収まり、人手が定着して業務の知識・経験・ノウハウが積み上げられる職場になれば、労働生産性も向上するでしょう。

求職者へアピールし、採用活動を強化できる

健康経営の活動を告知し、社員を大事にしている会社なのを伝えられれば、他企業と大きな差がつきます。

健康経営を推進する企業に与えられる「健康経営優良法人」や「健康宣言事業」などの顕彰を受ければ、健康経営に真剣に取り組んでいる企業であることが客観的に保証されるので、より効果的でしょう。

また、企業活動に関係するステークホルダー(投資家など)へのアピールも可能です。

各種認定制度によるインセンティブ

健康経営には「健康経営優良法人」や「健康宣言事業」などの認定制度が存在します。

これらの認定の取得によって、さまざまなインセンティブが受けられます。

  • 健康経営優良法人などの認定ロゴマークの使用許可
  • 各自治体のホームページや広報誌での企業名の掲載
  • 公共調達・公共事業の入札時の加点制度(一部の地域限定)
  • 自治体・金融機関による金利優遇(一部の地域限定)
  • 保険会社による保険料割引

さまざまなインセンティブを受けることで、効率よく事業を推進できるでしょう。

CSRやSDGsのアピールにつながる

近年になって、大企業や金融機関を中心にCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)や、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への取り組みが急速に進んでいます。

健康経営を推進することで、CSRやSDGsの推進を行っている企業だとアピールにもつながります。

内外へアピールすることで、信頼性の向上やエンゲージメント向上も見込めるでしょう。

健康経営への各種認定制度

本章では、健康経営に関連する各種認定制度を紹介します。

主な制度は以下の3つです。

  • 健康経営優良法人
  • 健康宣言事業
  • 健康経営銘柄

それぞれ解説します。

健康経営優良法人

「健康経営優良法人認定制度」とは、健康経営に取り組む優良な大企業・中小企業・その他法人を認定・顕彰(けんしょう)する公的制度のことです。

健康経営有料法人に認定されると、下記の図のような認定書を企業サイトや名刺など、さまざまな媒体に使用することが可能になります。

参照:「健康経営優良法人2024」認定法人が決定しました!|経済産業省

健康宣言事業

「健康宣言事業」とは、各保険者(協会けんぽ・健康保険組合)が実施している制度のことです。

取り組み内容は、健康宣言をおこなう企業の健康づくりを支援し保険加入者の健康を増進させることを目的としています。

たとえば、東京の協会けんぽでは「健康企業宣言」の名称で呼ばれており、愛知では「健康宣言」、大阪は「健康経営」の名称で呼ばれています。

健康経営銘柄

「健康経営銘柄」は、優れた健康経営に取り組んでいる上場企業を、経済産業省と東京証券取引所が選定し、認定する制度のことです。

下記の内容に取り組めているかチェックし、評価が下されます。

  • 健康経営が経営理念・方針に位置づけられているか
  • 健康経営に取り組むための組織体制が構築されているか
  • 健康経営に取り組むための制度があり、施策が実行されているか
  • 健康経営の取り組みを評価し、改善に取り組んでいるか
  • 法令を遵守しているか

上記のチェックリストを活用し、認定を目指しましょう。

健康経営を取り入れるべき企業の特徴

本章では、健康経営を導入するべき企業の特徴を紹介します。

主な特徴は以下の4つです。

  • 離職率・休職率が高い企業
  • 残業・休日出勤が慢性化している企業
  • 人材確保に苦戦している企業

それぞれ解説します。

離職率・休職率が高い企業

1つめは、離職率や休職率が高い企業です。

離職率の原因はさまざまですが、重労働による身体への負荷や人間関係のストレスなどが要因となっている可能性が高いでしょう。

近年では、メンタルヘルス不調による休職者が増えているため、健康経営の取り組みを始めるのがおすすめです。

下記は過去1年にメンタルヘルスによって1ヶ月以上休職した労働者や退職者がいた事業所の割合は13.3%でした。

参照:令和4年「労働安全衛星調査(実態調査)」の概況|厚生労働省

身体だけに限らず、メンタル面の健康を守るためにも、健康経営の導入は必要です。

残業・休日出勤が常態化する企業

2つめは、残業が多く、休日出勤が常態化している企業です。

長時間労働は脳血管疾患や心疾患、うつ病などの精神的な病気を発症する要因の1つになります。

そのため従業員の健康を守り、効率的な業務を遂行するためにも健康経営が大切です。

人員不足に苦悩している企業

最後は、人員不足に悩んでいる企業です。

健康経営の取り組みは、企業の採用活動を強化して人材流出を抑える働きがあります。

健康経営に積極的に取り組む企業としてアピールすることで従業員はもちろん、求職者に対するイメージアップにつながります。

健康経営の具体的な取り組み方

本章では、健康経営の具体的な取り組み方を紹介します。

主な事例は以下の3つです。

  • 健康診断や保健指導の実施
  • 仕事と生活の調和を実現する
  • バランスの良い食生活と適度な運動への促進

それぞれ見ていきましょう。

健康診断や保健指導の実施

まずは、健康診断や保健指導の実施を必ず行いましょう。

厚生労働省の2012年(平成24年)の労働者健康状況調査によれば、健康診断の実施率は従業員500人以上の事業所では100%に達するものの、規模が小さくなるほど実施率は低下し、従業員10~20人の事業所では89.4%と9割に満たないのが現状です。

参照:平成24年 労働者健康状況調査|厚生労働省

健康診断を実施した事業所のうち、所見のあった労働者がいる事業所の割合は69.8%と、令和3年より3.7%増加しています。

身体やメンタル面で違和感を感じている労働者がいたら、放置せず速やかに受診することを勧めましょう。

仕事と生活の調和を実現する

仕事と私生活のバランス、ワーク・ライフ・バランスを実現することも重要な施策です。

具体的は以下のとおりです。

  • 残業の事前申告制の導入
  • 勤務時間を正確に記録する
  • 残業・休日勤務の削減を評価項目に設定
  • 勤務間インターバル制度の導入
  • テレワーク・フレックスタイム・時差出勤制度の導入
  • 有給休暇取得の勧奨(取得目標の設定など)
  • 時間単位の有給休暇取得
  • 病気休暇・看護休暇・リフレッシュ休暇の導入
  • 育児・介護などのための短時間勤務制度や週3日勤務制度
  • ノー残業デーの設定

そもそもテレワークが難しい場合は、リフレッシュ休暇やノー残業デーを導入するなど、費用をかけずにできるところから始めることがポイントです。

バランスの良い食生活と適度な運動への促進

最後は、従業員へバランスの良い食生活や運動の促進です。

具体例は以下のとおりです。

  • 社員食堂・仕出し弁当・野菜などの現物支給を行う
  • 自動販売機や訪問販売などでの健康に配慮した飲料・栄養補助食品の提供
  • 食生活改善のアプリ提供や、社員食堂でのカロリー・栄養素表示
  • 腹八分目運動、野菜摂取週間、料理教室などの食生活改善の企画実施
  • スポーツクラブなどとの提携・料金補助
  • 職場内への運動器具の設置
  • スポーツイベントの開催・参加補助
  • 職場内でのラジオ体操・ストレッチ・ヨガなどの運動をする時間の整備
  • 徒歩通勤や自転車通勤の支援
  • 運動を目的とした同好会・サークルの設置や金銭支援・場所の提供
  • バランスボールなどの職場への設置

特に、夏場に塩飴やスポーツドリンクを無料で提供している現場や企業は多いのではないでしょうか。

このように、従業員の命を守る施策はもちろん、そのほかに食事で健康をサポートすることも立派な健康経営の1つです。

建設・製造業には健康経営が向いている

建設・製造業は、離職率・休職率が高く、人材確保が難しい状況です。

特に、24年春の新卒採用に関しては、主要ゼネコン35社中19社が採用を増加し、人材獲得競争が一層激化しています。

参照:主要ゼネコン35社/24年春新卒採用19社が増加、人材獲得競争が一層激化|日刊建設工業新聞

大手に人材が流れると、零細企業や中小企業ではより一層、人材不足に陥り、悪循環を招いていしまいます。

そのためには、今のうちから自社でできる健康経営を導入し、内外へアピールすることが重要です。

また、建設キャリアアップシステム(CCUS)との連携、連動を図り、健康経営を推し進める施策も有効でしょう。

健康経営を取り入れ、働きやすい職場をつくろう

健康経営にはさまざまなメリットがあり、建設業との親和性が高い経営法です。

現代社会では、少子高齢化による人手不足、心身の不調をうったえる労働者の増加など、深刻な問題が相次いでいます。

健康であることの大切さを再認識し、最悪のケースをふせぐためにも、健康経営を取り入れて企業価値の底上げを目指しましょう。

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