投稿日:2025年07月08日/更新日:2025年07月08日
建築コンサルタントとはどのような仕事?仕事の流れや役割を徹底解説
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建築業では、原材料費やエネルギーコスト増を筆頭に、物価高や人件費の高騰が続いています。
その中で、日本の骨格ともなる社会資本を整備する建築コンサルティングは欠かせない存在です。
では、建築コンサルティングとは一体どのような役割を担っているのでしょうか?
本記事では、建築コンサルタントの役割や仕事の流れについて解説します。

建設コンサルタントとは?
建設コンサルタントとは、道路、河川、ダムなどの社会資本を整備するために、調査計画や設計等に関連する技術コンサルティングサービスを実施することを指します。
また、上記を行う人のことも建築コンサルタントと呼ばれています。
時代の変化に合わせ、新しくものを作ることだけでなく今存在するものをいかに効率よく長く活用していくことも重要です。
建設コンサルタントの場合、建築に関するプロフェッショナルとして従来以上に高い専門性と技術力を発揮することが要求されます。
同時に、これからの社会資本整備は実際に利用する国民が利用しやすく、より効果的に仕上げることが重視されます。
建設コンサルタントは、行政と国民の間で中立的なスタンスで合意形成を図るコーディネーターの役割についても期待されているのです。

建設コンサルタントの歴史
建設コンサルタントという職業自体は実に歴史が古く、18世紀末にイギリスで発生した産業革命の時期に誕生しました。
当時、起業家が道路や運河、鉄道などの社会インフラを整備するため、設計から建設までを担当する建設会社ではなく、高度な専門技術により中立的なスタンスで依頼主の利益を守る役目を果たしたのが建築コンサルタントの起源となっているのです。
日本では、戦前から土木事業の計画や設計に関連する業務はすべて内務省など行政が直轄で実施していたため、外部への委託は行われていませんでした。
第二次大戦後に国土の復興を早めることを目的として建築コンサルティングが誕生し、日本国内で建設コンサルタンツ協会が設立されたのが1961年です。
日本の戦後の高度経済成長期において、インフラ整備と都市開発が進行する中で、建設コンサルタントの役割に対して注目が集まりました。
特に、1960年代から高速道路や新幹線の建設などの国を挙げての大規模プロジェクトにおいて、建設コンサルタントからの技術的なサポートが不可欠となっていきます。
建設コンサルタントの対象分野
建設コンサルタントは、日本標準産業分類では学術研究、専門・技術サービス業に彼後ライズされています。
詳細の対象分野は、以下22分野と多岐にわたります。
- 河川、砂防及び海岸・海洋
- 港湾及び空港
- 電力土木
- 道路
- 鉄道
- 上水道及び工業用水道
- 下水道
- 農業土木
- 森林土木
- 造園
- 都市計画及び地方計画
- 地質
- 土質及び基礎
- 鋼構造及びコンクリート
- トンネル
- 施工計画、施工設備及び積算
- 建設環境
- 機械
- 水産土木
- 電気電子
- 廃棄物
- 建設情報
建設コンサルタントには登録制度があり、登録の要件としても上記21分野が規定されています。
建設コンサルタントの仕事の流れ
建築コンサルティングは、主に以下の流れで仕事を進めていきます。
- 発注者から依頼を受ける
- 企画立案・計画策定
- 調査
- 設計
- 施工管理
- 維持管理
各流れについて、詳しく解説します。
発注者から依頼を受ける
建築コンサルタントの場合、仕事の受注から対応するケースが多いです。
発注者は国や地方自治体が多いものの、民間企業や国外から発注されるケースもあります。
国や地方自治体からの受注を受けるためには、業者登録を行い官公庁ごとに競争入札参加資格を申請しなければなりません。
そして、入札を経て正式に業務を受注する形となります。
企画立案・計画策定
発注が決定したら、依頼に合わせて企画を立案します。
依頼内容を実現するための基本的な方針や、事業の大まかな概要を決定します。
流れとしては、以下の対応が必要です。
- 発注者の要望やニーズの把握
- 基本構想を策定する
- 予算・工程設計を行う
- 関係者との間で調整する
- 基本方針を決定する
マスタープランと呼ばれる、基本計画を立案して方向性を示すことが重要です。
調査
建築コンサルタントは、さまざまな調査やデータ収集を提案していきます。
現地の交通量などをリサーチしたり、市民や地権者が主体となっているワークショップの運営によりさまざまな声を聴取したりします。
これにより、建築を進めていくために必要となる基盤を固めていくことが重要です。
そして、該当する現場において測量・調査を実施していきます。
コストだけに着目しがちですが、環境を保全しながら工事を進められるように、工事に伴う環境に与える影響の調査を行い、問題がないかどうかを考慮しなければなりません。
設計
実際の工事を実施するために必要となる、詳細な設計を実施していきます。
マスタープランに従って、概略設計や予備設計、詳細設計とステップを踏んで対応していきます。
最初の段階では、大まかな方向性を決めるための設計を行わなければなりません。
そして、最終的に建築現場で使用するための図面をアウトプットしていきます。
この設計図を発注者に収めて、発注者がゼネコンに対して依頼する流れで進行します。
一方、「設計・施工一括発注方式」という形態もあり、その場合は、建設コンサルタントと建設会社が協力し合いながら設計を行っていきます。
施工管理
実際に工事がスタートしたら、工事自体は別の事業者が実施するのが一般的です。
しかし、建設コンサルタントとしても設計通りに工事が進行しているかの確認や品質に問題がないかなど、施工全体の監理を実施する必要があります。
維持管理
完成した後、維持管理計画やその後の点検、補修・修繕などの維持管理も担当します。
依頼の受注、発案から、建物を建てた後の維持管理まで、すべての場面で活躍するのが建築コンサルタントなのです。

建築コンサルティングに与えられている4つの役割
建築コンサルティングには、以下4つの役割が与えられています。
- 安全かつ安心に暮らせるまちづくり
- 社会資本を活用し長持ちさせる
- 強靭な国づくりや地域づくり
- 自然環境を守る
各役割について、詳しく見ていきましょう。
安全かつ安心に暮らせるまちづくり
人口減少や高齢化が進む日本において、地域活性化や医療、福祉、商業といった生活機能を効率的にキープするため、地域公共交通の連携によりコンパクトなまちづくり計画を実施することが求められています。
また、バリアフリーやユニバーサルデザイン施策を支援しつつ、いつ・どこでも・だれでも安心して生活し移動できるユニバーサル社会を目指すことが、建築コンサルタントに与えられる役割です。
ほかにも、景観まちづくりを支援したり、都市交通円滑化施策を支援したりする役割を担います。
社会資本を活用し長持ちさせる
日本の社会資本の多くが、高度経済成長期に集中的に整備されている事実があります。
すでに50年を経過した構造物が少なくない中で、ITなどを有効活用して長寿命化計画を立案する役割を果たします。
また、今後急速に老朽化が進行していくと想定されている道路や橋梁、上下水道などを維持管理・更新を着実に推進し、耐用年数を延長していくことも重要な役割です。
ほかにも、インフラメンテナンスに対する取り組みや、新技術の開発による取り組みも担当します。
強靭な国づくりや地域づくり
日本では、多くの災害が発生している状況です。
そこで、人命や財産などを守るために地域防災計画などの各種防災計画の策定を担当したり、地域の防災意識を高める目的で防災訓練、避難訓練などを実施したりします。
津波や洪水、土砂災害、火山などの災害発生リスクについて、住民に対してよりわかりやすく伝える目的で、ハザードマップを作成することも重要な役割です。
自然災害に対する対策としては、津波や地震、洪水、火山噴火などをシミュレーションしておく必要もあります。
自然環境を守る
自然の生態系は、一度失うと復元に長い時間がかかって、場合によっては復元が困難なケースも多いです。
そこで、次世代に対して貴重な自然環境を残すために建築コンサルタントが対応する役割を担います。
多様な生命を尊重し、持続・保全する社会を目指して貴重種に対して特に配慮しながら生態系をリサーチして、共生できる調査や計画を実施します。
限られた資源を有効活用する目的で、再生エネルギーの導入を推進し生活する上で欠かせないゴミ問題への対応も必要です。

建設コンサルタントになるための要件
建築コンサルティングの場合、特に必要な資格はありません。
ただし、関連する資格を有していれば専門知識があることの証明となって企業に優遇される傾向にあります。
特に、以下の資格があると良いでしょう。
- 技術士
- RCCM
- 測量士
- 土木施工管理技士
各資格の詳細は、以下のとおりです。
技術士
国家資格である技術士は、建築コンサルティング会社から重宝される存在である。
それは、建築コンサルティング会社が登録するための要件として、建設部門の技術士資格を持つ従業員がいる必要があるためです。
技術士とは、科学技術に関連して高度な専門知識と応用能力を有している技術者が取得できる国家資格です
技術士になるためには実務経験が必要となり、誰でも今すぐに取得できるものではありません。
RCCM
RCCM(シビルコンサルティングマネージャ)は、照差技術者や管理技術者と認められる資格となります。
元々が建設コンサルタントなどを管理する技術者の育成や、技術力の客観的評価を目的として誕生しました。
民間資格となり、技術士よりも取得しやすいが大学卒業者でも7年間の経験がないと取得できません。
測量士
測量士は、さまざまな物件を設計したり、建築工事を監督したりするために必要となる国家資格です。
建設コンサルタントが建築士資格を取得していれば、異なる分野でプロフェッショナルとして活躍できるメリットがあります。
土木施工管理技士
土木施工管理技士は、土木工事に関連して安全管理や工程管理、品質管理、予算管理といった工事内容をトータルで監督するために必要となる国家資格です。
土木施工管理技士の活躍の場は多岐にわたり、建設コンサルタントとしてキャリアアップしたい場合におすすめの資格です。
建設コンサルタントの将来性
日本において公共工事としてみた場合、オリンピックや万博といった関係により2025年頃までは需要が続く見通しがあります。
大きなイベントが終了するとインフラ整備に対する投資が少なくなるので、従来と同じ仕事では生き残れなくなる可能性が考えられます。
しかし、インフラ整備などがなくなることはなく、建設コンサルタントとしての需要が減る可能性は限りなく低いです。
コンサルタントの高齢化が顕著になっている一方、若手の採用が減少しているため、将来的な成長が課題となっています。
よって、今後は労働環境の改善や人材の定着率向上が課題となっています。
まとめ
建築コンサルタントは、今後老朽化に伴いリプレースしていかなければならないインフラ関連の施設の建築において活躍が見込まれている存在です。
また、防災に向けても重要な役割を担っていくため、社会全体としても重要な役割を担っています。
建築コンサルタントは高齢化が問題視されており、今後より多くの有能な人材が建築コンサルタントを目指すことが期待されています。